テレビやスマホ画面を眺めているとき、無意識に口が開いてしまってはいませんか? 口呼吸は、疲労感・アレルギー・肌荒れ・老け顔・虫歯・口臭につながります。次のリストで2つ以上あてはまるものがあれば、口呼吸が習慣化している疑いがあります。ぜひチェックしてみてください。
<口呼吸チェックリスト>
□前歯が突き出ている
□いびき、歯ぎしりをしているときがある
□口角が下がっている
□アゴが細い
□目の下にクマがある
□唇がよく乾く
□顔が明らかに左右非対称
口呼吸がトラブルを起こすのは、口は本来呼吸器官ではないからです。唇は口に入れた食物がこぼれないようにし、言葉を発し、表情をつくるためにあります。舌や歯も、口に入れた食物を識別し、消化しやすく、かみ砕くためにあります。口は消化器官であって呼吸器官ではないのです。本来の呼吸器官は、鼻・喉・肺。鼻呼吸を前提に人間の体はできているので、口呼吸が慢性化すると、体にはトラブルが出てしまうのです。
喉を通して肺へ空気を届ける窓口は、鼻です。鼻は雑菌や空中のゴミをブロックしながら外気を吸い込むことができる仕組みになっています。例えるなら「フィルターのついた高性能な空気清浄機」です。
しかし、日本人の8割が口呼吸と言われています。これはスマホやPCなどによって下を向くことが多くなり、鼻呼吸のための気道確保ができず、楽に呼吸できる口呼吸になってしまっているのです。
口呼吸は、直接空気を口から肺に吸入することになります。そのため、空気中にある小さなごみや埃、細菌やウイルスなどを直接体内に取り込んでしまうのです。これが風邪をひきやすくなる要因の一つ。新型コロナウイルスも手から口に行く経路が最も感染率が高いと言われています。
また、風邪だけにとどまりません!口呼吸で口の中が常に空気にさらされるため、唾液が蒸発してしまい口の中が乾燥します。すると、細菌が繁殖しやすくなり虫歯や歯周病、歯肉炎、口内炎なども患いやすくなります。なにより口臭も強くなってしまうのです!
それだけではありません。負荷が掛かる呼吸であるため睡眠障害や慢性疲労など、さまざまな症状や疾患が引き起こします。最近お子さんでも口呼吸の方が増えてきました。成長期に口呼吸になってしまうと常に口を開けている状態が維持されます。すると口唇の力が弱くなり、歯並びが乱れ、咬み合わせが悪くなり顔の形まで変わってしまうのです。
「あいうべ体操」って聞いたことがありますか。「あいうえお」、じゃなくて「あいうべ」ってすこし変ですね。
あいうべ体操は、みらいクリニックの内科医である今井院長が考案した口呼吸を鼻呼吸に改善していく口の体操のことです。いつでもどこでも誰でもできる「あいうべ体操」は食後に10回、一日30回を目安に地道に続けると、舌力がついて自然に口を閉じることができるようになります。口を閉じるということは、鼻で呼吸をしているということ。口呼吸の改善は、あらゆる病気の原因治療につながります。あいうべ体操をしっかり継続している人は、自然に鼻で呼吸ができるようになり、アレルギー性疾患等の症状が改善していくことがあります。
呼吸は生まれてから死ぬまで一時も休むことなくしなければなりません。一日の呼吸回数はなんと2万回。それを鼻からする鼻呼吸なのか、口からする口呼吸なので驚くほど体が変わっていきます。
*あいうべ体操はこういう方にお勧めです
:口がいつも開いている
:何となく疲れやすい、だるい、やる気が起きない
:手軽にいつでもどこでもできる健康法が知りたい
:アレルギー性疾患(花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎など)で困っている
1、「あ」トピー性皮膚炎などの「あ」レルギーの病気
アレルギーは、その原因がよく分かっていません。一説には清潔になりすぎた現代生活が問題では無いかと言われます。昔から言われていた「風呂桶仮説」(体が許容できるアレルギー物質量を超えると発症する)は今ではあまり言われなくなってきました。
口呼吸は、慢性扁桃炎を引き起こし口、鼻の周りのリンパ組織が免疫異常を引き起こしてしまいます。それがアレルギー発症に関与しているのではと考えています。
2、「い」インフルエンザなどの呼吸器の病気
カゼや気管支喘息なども含まれます。
口呼吸は、乾いて冷たい、そしてきちんと異物が濾過されていない空気を体の中に入れ込んでしまいます。これがインフルエンザや風邪の発症に大きく関係しています。
気管支喘息でも、気道の過敏性が高まり冷たい空気を吸うことにより気管支が収縮し喘息発作の引き金となることも分かっています。やはり体にとって優しい空気の取り込み口である、鼻を活用することが呼吸器にとっては正しい呼吸なのですね。
3、「う」うつ病などの心の病気
その他にはパニック障害や倦怠感、慢性疲労症候群なども含まれます。
呼吸が自律神経に与える影響は小さくありません。 浅く速い呼吸は交感神経を緊張させますし、深くゆっくりとした呼吸は副交感神経の刺激となります。
口呼吸は浅く速い呼吸になり、鼻呼吸は深くゆっくりとした呼吸になることが分かっています。鼻呼吸は精神安定につながります。
4、「べ」べんぴなどのお腹の病気
過敏性腸症候群(IBS)、潰瘍性大腸炎、クローン病といった炎症性腸疾患(IBD)です。
便秘が気になる方は、「い~う~」体操だけを5分間続けてみてください。それだけで翌日「スッキリ」となる場合も。お通じが良くなれば、痔もよくなることがあります。
(1)「あー」と口を大きく開く
普段よりも大きめに
(2)「いー」と口を大きく横に広げる
首に筋が張るくらいまで
(3)「うー」と口を強く前に突き出す
しっかりと前に突き出します
(4)「ベー」と舌を突き出して下に伸ばす
顎の先をなめる感じで
(1)~(4)を1セットとし、1日30セットを目安に毎日続けます。
この体操は、真剣に行うとかなり疲れます。慣れるまでは、2~3度に分けたほうが続けやすいでしょう。
また、「あいうべ体操」は、しゃべるときより口をしっかり、大きく動かす必要がありますが、無理は禁物です。
とくに顎関節症の人やあごを開けると痛む場合は、回数をへらすか、「いー」「うー」のみをくり返してください。この「いー」「うー」体操は、関節に負担がかからないため、何回行ってもけっこうです。
「ベー」がうまくできない人は、大きめのあめ玉をなめて、舌を運動させましょう。舌運動と甘味の刺激で、脳も活性化します
口で息をするだけそんなに体に悪いのだろうか、そう考える人がいることでしょう。
また、もともと鼻で呼吸をする習慣がなくて呼吸は口からと考えている人も多いでしょう。
口呼吸がもたらす最大の弊害は、咽頭リンパ組織の乱れや鼻粘膜などの萎縮、口腔内雑菌の繁殖によって引き起こされる免疫異常です。さらに顔や体の歪みまでも引き起こしてしまうのが口呼吸の怖さなのです。
もちろん全ての病気が「あいうべ」体操で改善するわけではありません。またすべての筋肉の動きができるわけでもありません。大切なことはあいうべ体操をすることではなくて、口呼吸を鼻呼吸に変えて行くことです。
あなたの呼吸を正しい呼吸に変えていく、ということが大切です。
理学療法士 E.S.